2012/11/05

悲しいこと。

母がお世話になっている高齢者マンションにはたくさんの老人が住んでいます。
僕は毎週土日というペースを極力変えずに、そこに顔を出しているのですが、
そうなると結構仲のよくなるじいちゃん・ばあちゃんたちがいまして。
で、あんまし喋らないけど、来るたびに会釈して2~3軽くお話する人たちもいます。

あるおばあちゃんがいましてね。
その方は、いつもひとりでフラーっとマンション内を歩く。
日曜日のカラオケ大会。
そのおばあちゃんは歌わないんですけど、後の方の席で座ってみんなの歌を聴いている。
時々、僕と母の姿をみて、「うたわへんの?」って聞いてくる。
で、たいがい続けて
「うたわんでもよろしいやん。うちもここでみんなの歌を聴いてるだけなんよ」
って言う。


若干喋りがスローテンポ。でも、お話が好きそう。
神経質っぽいところもある。
もともと育ちがいい方なんでしょう。
話し方に品もある。



で。そのおばあちゃん、今年の2月ごろから見なくなりました。
僕と仲がいい、車椅子のおっちゃん・Nさんによれば、
そのおばあちゃん、入院したそうな。

僕がそのおばあちゃんを見て、精神面で不安定なところがあるなぁと感じていましたので、入院と聞いても特に驚くこともなく。
だけど、その入院が長かったのです。
ちょうど半年ですね。
高齢者マンションに帰ってこられたのが8月でした。

半年って期間がミソです。
おそらく6ヶ月間でいったん切ったんでしょうね。
諸事情を考慮して、退院させられたのでしょう。
もちろん、退院してもいいくらい体力も精神的にも落ち着いたってのが一番なのですが。


帰ってきたおばあちゃんを見て。
ちょい表情が変わったかなぁと思ったけど、ま、無事そうだし。
ちゃんと前みたくマンション内を散歩してはったし。
時々、入居者やヘルパーと話す姿も見たし。


だけど。
この前の土曜日。夕食の時間。
そのおばあちゃんの姿を見て、ショックを受けました。
急に、です。

エレベーターからヘルパーさんに付き添われてね。
ヘルパーさんが誘導しないと、まっすぐ歩けなくなっている。
テーブルについたおばあちゃん。
表情が別人みたい。
前見たく、気品のある穏やかな表情は消えて、
感情がなく、こわばって、目線が一点に集中している。
無言。
髪型も違う。
いや前と同じショートなんだけど、
そこには性というものが存在しないような。
丸い表情だったのが、まるでホームベースみたく角ばった表情。



タバコタイムの時。
車椅子のおっちゃん・Nさんに聞きました。

「あのばあちゃん、急に変わりましたね」
「おお、そうや。俺も何度か話しかけたんやけど、前みたいに返事してくれへんねん」





また違うおばあちゃんでね。
車椅子のおばあちゃんなんですけど、お相撲が好きでして。
夕食の時間、お相撲がある時は
「おにいちゃん、ちょっとだけ」っておっしゃる。
(おばあちゃんからしたら、僕でもおにいちゃんに見えるのです)

「あ。相撲ね。テレビが見えへんよね。ごめんね。すぐよけます」

おばあちゃんは丁寧に会釈をして、ニコッと笑ってくれる。

そのおばあちゃん、1~2ヶ月ほど前かな。
何度も何度も、ヘルパーさんに怒るシーンを見ました。
お金の管理のことで、ヘルパーさんと揉めているのです。
はげしく、しつこく。
なごやかなおばあちゃんを知っている僕からすると、ちょっと尋常じゃないなぁと。


たいがい。精神疾患を患って不安定になっている場合。
当人の発言の内容には、「お金」ってキーワードが絡むケースが多い。
もしくは、「性」がらみ。

そのおばあちゃんは入院しないでいるんですけど、
最近、やっぱり表情が変わってきました。
なごやかじゃない。
やっぱり丸い表情から、角ばった表情に変わってきています。

そのおばあちゃんがどんな病気を患っているのか。
また、認知症なのか。認知症ならどの程度の進行具合なのか。
僕は知りません。

ただ。
僕は以前に母がいろんな病気を患ったのを間近で見てきた経験から、
おそらくこうなのかな、って感じで自己満足な分析をする。

僕には何もできることがなく。
っていうのか、僕は本当は自分の母を見にきているのであって。
ある意味、高齢者マンション側のご好意で、ギリギリの時間まで、
長い時間そこに居させてもらっているだけ。
で。そこで見た光景に勝手に悲しくなっている。胸が痛い。



今日、ここで書いたおばあちゃん、二人。
共通することがありまして。
どちらも、僕はご家族さんが来ていらっしゃるのを、見たことがない。
そもそも、家族がいらっしゃるのかどうかも知らない。

でも。もし。ご家族がいらっしゃったら。
当人さんが大きな出来事に面しているのに、なぜ孤独にさせるんだろう。
無茶苦茶しんどい時に、何で一人にさせるんだろう。
分からない。


何度も以前に書きましたが。
ヘルパーやお医者さんができるのは、お膳立てをすることだけです。
本人さんのつらい心を和らげてあげられるのは、やっぱり家族だけなのです。

僕、以前、療養型病院の看護師長に、
「あなたは医療のプロです。僕は母のプロです」
って啖呵きったことあったんですよ。

それくらい、本気でいかないと
人の心に届かない。
それは、ナースさんもそうだし、ヘルパーさんもそうだし。
んで、当事者の母自身にも。

営業経験で培った話術なんて、こんなところでは通じません。
っていうか、そんなんで人の心に訴えるのなんて、所詮うわべだけのもんです。

ちょっと話がそれました。



僕は、人の終わり方ってのに興味がありまして。
いや、興味じゃないな。
惹かれるのです。

その人の長い人生、いろいろあっただろうけど、
今ここにいるのは、それらから解放されようとしている人。
友だちも多かったでしょうし、ケンカもたくさんしたでしょうし、
人を憎んだこともあったでしょうし、
もちろん、誰かを愛して、家族も持っていただろうし。

それらを経験して、行き着いた場所。
で、あとは。言葉は悪いかも知れないけど、
なるべく平穏に、お迎えがくるまで、時間を過ごす場所。

そう。なるべく平穏に。


僕は母に何ができるのか、って考えた時。
その、なるべく平穏に、ってのを
母が僕を産んでくれたお礼に、彼女に提供してあげないと、って思いました。

もちろん、僕はお金持ちじゃないし。
貧乏ヒマなしで働いているし。
けど、土日なら何とか空けられます。
っていうか、連続した2日間。無理からにでも空けます。
この時間を使って、母にお返しをしたいだけなのです。





いつもタバコタイムの時に、車椅子のおっちゃん・Nさんと
もう一人、いつも自分の年齢を84歳って言う、本当は82歳のおばあちゃん・Hさん。
彼女には一人、娘さんがいらっしゃるそうです。
ただ、その娘さんには何も言わず、このマンションに引っ越してきたそうです。
娘さん、今60歳くらいになっているそうなのですが。。。

娘さん、本当は探しているんじゃないかな。
いや、Hおばあちゃんのこと、心配していてほしいです。
何も気にしないで、自分の生活に精一杯で、って感じだと、
ちょい悲しい。

Hおばあちゃんは、なんだかんだ言いながら、
娘さんのこと気にされています。
元気で生きていてほしいと願っていらっしゃます。





えっと。
あさっての水曜日。
朝、高齢者マンションに寄って、会社に行きます。
何があるかっていうと、母がインフルエンザの予防接種を受けるんです。
ナースさんやヘルパーさんに、遠まわしに言われましてね。

「去年、大変でしたよ。息子さんの電話がなかったら、注射させてもらえないところでした」
そう。去年、僕が会社で行けないから、インフルエンザの注射を打つ直前に、
母に電話を繋いでもらって、母を説得したんです。


「今年は・・・」
「えぇ。僕、付き添いますよ」
「え?いいんですか?」
「その方がスムーズに行くんでしょ?」
「いやぁ、そんなの悪いです」
「で、ナースさん、悪いけどその代わりに朝イチ、トップバッターにしてくださいよ。僕その後、会社に行くんですから」


ま。これも、親孝行の一つですわ。
はい。
笑。
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